私たちの身の回りにはさまざまな自然が存在しています。
例えばチューリップやパンジー、コスモスなどのお花は、皆さん目にする機会も多く、よく知っているのではないかと思います。では「地衣類(ちいるい)」という分類の生物はご存知でしょうか?
地衣類はキノコと同じ「菌類」からできていますが、菌糸で作られた構造のなかに「藻類」が共生しており、光合成をすることができる生物です。
藻類の光合成産物を菌がエネルギーとして取り込み、菌の方は、菌糸で覆うことによって藻類を有害な紫外線から守っています。
地衣類は「菌」と「藻」が組み合わさって生きている、とてもユニークな生物なのです。
そんな中から、今回「ろうそくゴケ」を使用したろうそく作りを皆さんに行っていただきました。
講師は昆虫をはじめとした自然分野にとても詳しい「小粥さん」。
参加者の皆さんの前での挨拶のあと、用意した資料にそって、簡単に地衣類についての解説を行いました。
「ろうそくゴケ」はヨーロッパでろうそくの染料として使われていた地衣類で、鮮やかな黄色をしています。名前に「コケ」とついていますが、苔の仲間ではありません。
日本では本州、四国、九州に分布し、木の幹などに生えています。比較的様々な場所でみつけることができるようです。
(今回用意したろうそくゴケは、小粥さんが市内の街路樹で採取してきたそうですよ)。
ミステリアスな地衣類について、皆さん興味深く聞かれていました。
解説の後、ろうそく作りに取り掛かります。
まずは皆さんにお持ちいただいた型のサイズに合わせた数のろうそくを配ってゆきます。大きなもので3〜4本、小さなものは1〜2本のろうそくを配布しました。
いろいろな形の型をお持ちになり、複数のろうそく作りにチャレンジされる方も。
配ったろうそくは、手で細かく折って缶の中に入れていただきます。ポキポキ折る感触が皆さん楽しそう。
次に、底のない筒状の型をお持ちいただいた方には、ろうが漏れてこないようにアルミホイルの上に乗せて土台の周りを粘土でかためていただきました。
皆さん、力を込めて固定されています。
固定した型の上に、ろうそくのひもを割り箸ではさみ、底につくぐらいの長さに調節して置いて準備完了です。
その後、ろうそくゴケを缶の中に配りました。入れる量の多さによって黄色の濃さが変わってくるので、皆さんにお好みの分量を伝えてもらい、小粥さんが計測して配ってゆきました。
用意ができたら、湯煎でろうを溶かしてゆきます。
カセットコンロを用意し、交代でお湯の湧いたフライパンの中に缶を置いていただきました。
溶けてゆく様子をじっくり眺めるみなさん。
※家でろうを湯煎するときは、揮発するためよく換気をして行ってくださいね。
ろうが溶け切ったら缶を取り出し、茶こしを通して型に流し入れます。
あとは固まるのを待つのみ。固まるまでの間、屋外で地衣類探しを皆さんに行っていただきました。ルーペを配り、対象を間近で観察するように説明する小粥さん。
顔を寄せて対象物をじっくり調べることが、研究者への第一歩です。
木の幹に、地衣類を発見した方がいらっしゃいました。
「ウメノキゴケ」という、広く見ることのできる地衣類です。排気ガスの多い場所にはあまり生息しないことから、大気汚染の指標にもなっています。
観察の後ラボに戻り、いよいよろうそくを型から取り出していただきました。
複雑な形の型は少し取り出すのに苦戦されていたようですが、みなさんきれいな黄色のろうそくが出来上がっていました!
作ったろうそくは、ぜひお家で火を灯してみてください。
溶かす時にアロマオイルをまぜると、おしゃれなアロマキャンドルにすることもできますよ。
開催した9月1日は「防災の日」でした。ろうそくは防災グッズとしても役に立ちますね。今回のイベントが、災害やその対策についても考える機会となっていただけていますと幸いです。
ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。