皆さんは青色LEDをご存じでしょうか?
青色LEDは「発光ダイオード」のうちの、青色に光るものを指します。主に窒化ガリウムを含む半導体材料によりつくられています。
2000年はじめごろまでは、光といえば白熱灯・蛍光灯が主流でした。しかし、青色LEDの開発により、既存の赤・緑のダイオードと組み合わせることで「完全な白色」の光を生み出すLED灯が誕生し、光の歴史を塗り替えました。
LEDはより明るく省エネルギーな光として、今や世界中のさまざまな場面で使用されています。皆様のご家庭でも多く使用されていることと思います。そんな青色LEDの開発に貢献され、2014年にノーベル物理学賞を受賞された天野浩氏(名古屋大学教授)は浜松市のご出身であり、当館の名誉館長でもあります。
正面玄関まで続く屋外のアプローチには「天のリバー(あまのリバー)」と名前を付け、夜は青色LEDでライトアップして、来館者の皆様をやさしく見守ります。
8月13日は、みらいーら特別イベントとして天野名誉館長のトークショーと実験教室を開催いたしました。トークショーは中央のみらいーらステージで開催し、事前の抽選による80名の方にお集まりいただきました。
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司会進行を務めるのは当館サイエンススタッフ「うえちゃん」。皆様の大きな拍手とともに、天野氏が登場されました。
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まずは天野氏の幼少期から振り返ります。
スポーツ少年だったという天野氏。ソフトボールやサッカーなどのスポーツ活動をされていたそうです。また、夏休みの宿題はぎりぎりまで引き延ばしていたという、親しみのわくエピソードもお話しいただきました。
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中学を卒業後、浜松西高等学校に進学。得意の数学を活かせる理学部の道を志しますが、共通一次試験の結果から名古屋大学工学部へ進学することに。そこで恩師である赤崎勇教授と出会われます。
赤崎教授の勧めにより博士課程に進み、窒化ガリウム(GaN)の研究を進めるうちに高品質単結晶化やp型化に成功。世界で初めて窒化ガリウムを用いた「青色発光ダイオード」の開発ができたのです。
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現在は「持ち運びのできる電気」の研究を進められているという天野氏。「Internet of Energy」という構想で、無線の環境下で電気を供給できる仕組みを考えられているそうです。こちらが実現した際には、より自由なエネルギー世界が誕生しそうですよね。
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後半は質疑応答の時間を設けました。
参加者の方々から次々と手が上がります。「あきらめない心はどうやったら身につけることができますか?」という質問には、「なんとしてもやり遂げる、という意思をもって取り組むこと」という、根気強い研究でノーベル賞受賞につなげた天野氏ならではのお答えがありました。
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その他、「好きな食べ物は何ですか?」という質問には、はにかみながら「カレー」と答えられるなど、終始気さくにお話しいただいた天野氏。
参加者の皆様にとって、楽しく実りあるトークショーとなったのではないかと思います。
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午後からは「ものづくりラボ」にて、特別実験教室を開催いたしました。こちらも事前の抽選による小学4~6年生の40名の参加者にお集まりいただきました。
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引き続き進行をつとめるのは「うえちゃん」。
はじめに、光の色についての解説を行いました。光の色というと白や明るい黄色を想像する方が多いのではないでしょうか。しかし「分光シート」を通して光をみると、虹色でできていることがわかります。
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LEDや白熱灯の色の見え方の違いを説明する天野氏とうえちゃん。
この現象を体感いただくため、赤・青・緑の光の出るペンライトを使って皆さんに実験してもらいました。
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どの色の光をどう組み合わせると何色になるか、シートに書き込んでいただきます。すると、赤・青・緑すべてを合わせた時、白色の光になることが分かりました。
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これは「光の三原色」と名付けられています。赤・青・緑の三原色の光が合わさると、わたしたちの目には白く見え、普段感じている光の色となるのです。
さて、光について学べたところで、いよいよ実験工作の開始です!アクリル板に描いた絵を青色LEDでライトアップする、スタンドオブジェをつくっていただきました。
まずは青色LEDの左右の足を折り曲げて、電池ケースのついたプラス・マイナスの電線につなぎます。
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繋ぎ終わったあと、電池を入れてスイッチをONにすると、青い光がともりました。ライトが付いた瞬間は、皆さんから喜びの声が上がっていました。
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続いてアクリル板を支えるスタンドづくりです。黒いスチロール板を、専用のボンドで張り合わせます。ボンドの扱いにみなさん苦戦されているようでした…。
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スタンドが完成したら、黒マジックでアクリル板に好きな絵をかいてもらいました。動物や食べ物、乗り物の絵、自分の名前、「天野先生」の文字を入れた方も!
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描き終わった絵は「ルーター」という機械でなぞって削ってゆきます。歯医者さんのような音がする機械ですが、少し手に触れたくらいではケガをしない道具ですのでご安心ください。
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皆さん集中して取り組んでいます。
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天野氏は、ひとつひとつ皆さんの作品を見て回り、コメントされていました。
参加者の方からは天野氏にノーベル賞や青色LEDについての質問をするなど、楽しく交流されている様子が見られました。
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LEDライトとできあがった絵をスタンドに挟んでスイッチを入れると…削った部分が青く浮かび上がる、スタンドオブジェの完成です!
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部屋の電気を消してみると、とてもきれいですね。ぜひ、お家に帰ってもお部屋に飾ってみてください!
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青色LEDは光の歴史を変えたといわれる大きな発明です。そんな発明をされた天野氏の人柄や研究者としての熱意に触れ、科学への興味が強まった方も多いのではないのでしょうか。
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浜松科学館では、これからも天野名誉館長とともに「科学に挑戦する人」を応援してゆきたいと思います。ぜひ皆様好奇心をもって、さまざまな科学の扉を開いてみてください!