表紙の1枚(vol.26):「面白そう」があふれる広場

浜松科学館ニューズレター「COMPASS」。
第26号の表紙は「みらいーらルーム」でのワークショップの様子です。

みらいーらルームでワークショップをしている様子

浜松科学館では、2024年度と2026年度の二期に分けて館内の一部をリニューアルします。第一期は2025年3月20日にオープン。「自由に楽しみ、〈面白そう〉があふれる広場」をビジョンに、さまざまな人が思い思いに過ごせる、開かれたまなびの場所を目指します。

プロジェクトメンバーの一人である上野さんは、次のように話します。

上野さん「今回のリニューアルは、浜松科学館の運用を担う現場の職員が中心となって進めています。日頃、利用される皆さまと対面で関わる中で、〈こうなったらいいんじゃないか〉と感じていたことを形にすることを目指しました。」

全体設計は、浜松市所在の建築事務所「辻琢磨建築企画事務所」が担当。2021年の当館企画展「わたしにとっての文具展」でご協力をいただいた縁で、今回のプロジェクトをお引き受けいただきました。他にも、地域の方々をはじめとする多くの方のお力をいただきながら、プロジェクトを進めています。

「わたしにとっての文具」取材記事はこちら

表紙に映る「みらいーらルーム」は、リニューアルのメイン箇所です。創造や探求などを通したいろいろな交流ができるワークショップスペースとして、常設展内に新設しました。気軽に科学に触れられる「ちょこっと体験」や、工作・実験体験など、多種多様なプログラムを行うことを予定しています。

みらいーらルーム全景

上野さん「みらいーらルームでは、これまで行なってきた工作・実験ワークショップの他にも、もっと自由で、答えのないようなプログラムも展開していきたいと思っています。〈これ用のスペースです、これしかやりません〉ではなく、〈なんでもできる空間〉になるといいなと願っています。」

みらいーらルームでコマの制作ワークショップをしている様子

加えて、今回の展示リニューアルでは、「WAGON」というしくみも導入しました。可動式のワゴン什器の上に、主に職員が考案したささまざまな実験装置が搭載されます。第一期の今回は、主に音ゾーン、力ゾーンを中心にワゴンを配置します。

上野さん「科学館の展示の中には、ボタンを押すと現象が起こる、みたいな、しくみがブラックボックス化しまっているものを見かけます。それでは、僕らの伝えたい〈科学〉が伝わりきらないこともあるんじゃないかと思います。新しく取り入れた〈ワゴン〉では、搭載するものはできるだけアナログであることを重視しました。ある種、素朴で手作り感のある内容が、記憶に残る〈科学のおもしろさ〉を感じていただけると考えています。」

ワゴン展示を体験している様子

上野さん「それと、可動式で出し入れや移動が簡単にできるようにしたことも大きな特徴です。時期などに合わせて入れ替えが容易にでき、みんなが思いついたことをどんどん実現していけるものになればと思っています。サイズは辻さんともこだわって、エレベーターに入る仕様にしました。例えば、1階で行う特別展で使おうとか、ショップの商品ここに置いてこんな実験展開してみましょうとか、館外のアウトリーチに活用しようとか、そういったことも随時展開していけると良いなと考えています。」

力ゾーンのワゴン

また、音ゾーンの奥に「へんてこ楽器」を新設。浜松市所在で、ユニークなものづくりを行う「ファブラボ浜松/テイクスペース」に設計・施工をいただきました。日用品など身近なものを組み合わせた「楽器ではない楽器」が集まります。

上野さん「いかにも楽器、というものではない楽器を作りたかったんです。例えば、ピアノだと習っている人は弾けますが、そうでない人にはハードルが高く感じてしまう人もいます。そこで、たたく、踏むなど日常の動作で気軽に音を奏でられ、それがフライパンや、塩ビパイプなど楽器らしくないものが楽器になっていると面白い!と考えました。また、この場所はステージになっており、みんなでセッションできます。遠足などでも楽しんでほしいです。」

へんてこ楽器を体験している様子

今回の展示リニューアルでは、アクセシビリティの向上も目指しています。市内在住のリードユーザー※1の方々とともにワークショップを行い、「だれもが楽しめる科学館」について考えました。そこから得た気づきなどを、館の運用ポリシーに組み込むことを進めています。設備面では、一部サインの更新や授乳室の新設、車椅子対応のワゴン什器などを取り入れました。合わせて、公式ウェブサイトの全面改修も行います。

1F授乳室
インクルーシブデザインワークショップの様子
1F授乳室
1F授乳室

加藤「ワークショップや研修などを通じて感じているのは、インクルーシブ※2な場を叶えていくには、〈これをやったら終わり〉ではなく、常に市民や利用者の方々とともに考え、対話していくことが大切だということです。次年度からはご利用に困りごとがあった際の相談窓口も設けます。さまざまな方と協働しながら、あらゆる人が安心して利用できる場所にしていければと思います。」

上野さん「今回の展示リニューアルは、これで完成ではなく、ここからがスタートだと考えています。色々な人が科学館を通じて交流し、一緒にいろいろな『面白そう』を生み出していきたいです。」

浜松科学館内部全景

第一期館内一部リニューアル ティザーサイト


※リードユーザー:対象となる環境やサービスからは遠い(または遠くにさせてしまっている)属性を有し、視座・視点をもって気づきを与えるユーザー

※インクルーシブ(inclucive):「すべてを包括する、包みこむ」という意味。障害の有無や性別、性的嗜好、人種などの違いを認め合い、すべての人がお互いの人権と尊厳を尊重しあいながら共生することを目指す概念。