今月の星空(2024年9月)

 浜松科学館では、浜松市天文台と共同で毎月の星空をお届けする1枚冊子「星空案内」を発行しています。本ブログで、その内容を一部公開いたします。

天文台からのコメント:9日に土星が衝を迎えます。衝とは、太陽の正面に惑星が位置することで、観望の好機になります。
天文台の星空観望会は19時30分~21時(10月からは18時30分~20時30分)です。遅い時間の方が土星は見えやすい高さになります。
(文:浜松市天文台)
浜松市天文台のWebサイト

「星空案内」2024年9月号 PDF版をダウンロード

9月の星空案内 夏の星空と星座

2024年9月 上旬:22時ごろ 中旬:21時ごろ 下旬:20時ごろ

 9月の夜空は、夏の星座から秋の星座への移り変わりが楽しめます。西よりの空に夏の大三角、東よりの空に秋の四辺形を探してみましょう。
 惑星もいくつか見えています。特に土星は観測の好期を迎えています。今年・来年は環の傾きが小さく、望遠鏡をつかうと串にささったお団子のような姿を見ることができます。また、夜がふけてくると、東の空から火星や木星が昇ってきます。明るい星がおおい冬の星座たちの中にあるので、いつにも増してきらびやかな星空になっています。
9月17日は中秋の名月、お月見の日です。中秋の名月は必ず満月になるわけではありません。今年は満月の一つ前、まだ少し欠けた月になっています。
 『次の夜から欠ける満月より 14番目の月がいちばん好き』
荒井由実さんの「14番目の月」という曲の一節です。月はいつ見ても、満月でなくても、心を動かされるものがあるような気がします。今月はぜひ、月の満ち欠けを楽しんでみてはいかがでしょうか。
 今年の中秋の名月がなぜ満月でないの?と疑問を持たれた方は紙面版(PDF版)の星空案内もご覧ください。(本ページ冒頭にダウンロードリンクがあります。)
 さらに、月は毎日見える場所が少しづつ変わるため、様々な星に接近し、肉眼でもその共演を楽しめます。
18日に土星、24日に木星、26日に火星と接近して見えます。特に18日は満月になります。満月と土星のデュエットをお楽しみくださいね。

や座

や座

 夏の星座の目印となっているのが夏の大三角です。その三角形の中に星座があります。アルタイル寄りにある小さな星座が「や座」です。この小さな星座は、紀元前から星座として確認されています。プトレマイオス(星座をまとめた元祖とされる2世紀の天文学者)が設定した星座として現在も受け継がれている歴史の長い星座です。
 この「や」は星座絵の通り「矢」です。それも黄金の矢です。諸説ありますが、通常は愛の神エロス(キューピッド)の矢とされています。エロスは戦いの神アレースと愛の女神アフロディテの子です。丸い体に翼が生え、矢筒と弓を持っている姿はどこかでご覧になったことがあるでしょう。この黄金の矢は、神通力があり、射られるとだれもが恋心を起こしてしまうとのことです。一方エロスの持つ鉛の矢で射られると、恋が冷めてしまうというものでした。エロスはこの矢でオリンポスの神々の間をいたずらし、悩ませていたと言われています。
 冒頭、や座を「小さな星座」とご紹介しました。星座の大きさとは、その広さ(面積)です。現在の88星座は20世紀に入ってから公式にまとめられたものであり、星座は天の座標をもとに境界線で区切られた「場所」です。その面積をもとに「大きい」、「小さい」という表現をします。や座は、全星座の中で3番目に小さい星座です。ちなみに一番小さいのは「みなみじゅうじ座」(浜松からは見えません)、二番目は「こうま座」(秋の星座)です。88ある星座の中で「や座」のように一文字の○座は他に、「ほ座」「ろ座」があります。
<参考> 全天星座百科(藤井旭;河出書房新社)/星座神話ガイドブック(沼澤茂美、脇屋奈々代;誠文堂新光社)

月のうさぎはどこから?

 「♪うさぎ、うさぎ、なに見てはねる。十五夜お月さま、見てはねる」。秋といえばこの歌が似合う季節、そう、お月見の季節ですよね。歌にもある通り、よく月の模様を見て「月にはうさぎがいる」「うさぎが餅つきをしている」と表現することがよくありますよね。このように月に模様があるように見えるのはなぜかご存知でしょうか。それは月の表面の岩石の成分が、場所によって違うからなんです。
 この岩石の成分の違いがなぜ生まれたかというと、月が誕生した時まで遡ります。月の誕生には諸説ありますが、一番有力な説は地球に別の天体がぶつかってできたとされる「巨大衝突(ジャイアントインパクト)説」です。生まれたばかりの月はその衝突の衝撃で内部までドロドロに溶け、マグマオーシャン(マグマの海)が形成されました。しかし時間がたつとそれもゆっくりと冷えて固まり始めます。その際に、鉄やマグネシウムなどの比較的重い元素を多く含むカンラン石や輝石などの黒っぽい鉱石は地下深くに沈み、アルミニウムやカルシウムなどの軽い元素でできた白っぽい鉱石は結晶化して地表に浮かんできます。そのため月ができた直後は表面が白い鉱石で覆われていました。しかし月ができて5,6億年後に月へ巨大な隕石が突撃しました。その際に割れ目から玄武岩を多く含むマグマが出てきて、クレーターを覆いました。玄武岩は黒っぽい鉱石であるため、黒っぽく見える部分が形成されたのです。こうしてできた月の表面の色の違いを地球から見ると、なんだか模様のように見える、というわけです。
 日本ではうさぎに例えられることが多いと思いますが、世界では女性の横顔やカニに例えられることがあります。また、月の自転周期と公転周期は等しいのでいつも同じ面を地球に向けています。そのため月が見えている時はいつでもこの模様を楽しむことができます。
 さあ、今年の十五夜、つまり中秋の名月は9月17日です。この中秋の名月とは旧暦の8月15日に見える月を指します。この日にお月見を行うという文化は、平安時代に中国から伝わってきました。元々は貴族の間だけの文化で、彼らは月を見ながらお酒を飲んだり、歌を詠んだりして過ごしていました。美しい月を見て風流な時間を楽しむという慣習は、1000年以上も親しまれてきたのですね。普段忙しくてなかなか空を見上げる時間がないという方も、この日は月をゆっくり眺めて風情ある時間を過ごしてみるのはいかがでしょうか。

月(画像:浜松市天文台)
月の模様(画像:浜松市天文台)

浜松科学館で投映中の番組

  • 宇宙へGO!夢の宇宙旅行2024

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    「宇宙へGO!夢の宇宙旅行2024」
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