今月の星空(2024年7月)

 浜松科学館では、浜松市天文台と共同で毎月の星空をお届けする1枚冊子「星空案内」を発行しています。本ブログで、その内容を一部公開いたします。

天文台からのコメント:7月になりました。夏の星空を楽しむためにも、梅雨が明けるのを待っています。気象庁のホームページによりますと、東海地方の梅雨明けは、平年は7月19日ごろとのことです。今年はどうでしょうかね。夏休みには、たくさんのイベントを用意しています。ぜひ、星空を楽しんでもらいたいです。
(文:浜松市天文台)
浜松市天文台のWebサイト

「星空案内」2024年7月号 PDF版をダウンロード

7月の星空案内 春の星空と星座

2024年7月 上旬:22時ごろ 中旬:21時ごろ 下旬:20時ごろ

7月の星空では、春の星座と夏の星座がどちらも楽しめます。
春の星座も夏の星座も、明るい星を3つつないだ大きな三角形が目印になります。
まず南から西の空で、うしかい座のアークトゥルス、おとめ座のスピカ、しし座のデネボラをつないでできるのが、春の大三角です。
そして南から東の空で、こと座のベガ、わし座のアルタイル、白鳥座のデネブをつないでできるのが、夏の大三角です。
2つの大三角をどちらも見つけることができれば、全部でなんと6つも星座を見つけたことになります。

7月は七夕がありますね。夏の大三角の星、こと座のベガはおりひめ星、わし座のアルタイルは彦星です。どちらも一晩中見ることができます。

深夜から未明にかけて、南から東の空には2つの惑星を見ることができます。南東に見えるのは土星、東の低い空に見えるのは火星です。

夜でも暖かくなり、梅雨が明ければ星を見やすい季節になります。夕涼みの散歩のお供に星空を楽しんでみてください。

へび座&へびつかい座

へび座とへびつかい座

近くのさそり座や夏の大三角に比べると暗い星が多い星座ですが、条件がよければ男性の頭にあたるα星(ラス・アルハゲ)をスタートとして、将棋駒のような形を結ぶことができます。星座絵は、男性が大きなヘビをつかんでいる様子で描かれます。
へびつかいと言っても「レッドスネーク、カモン!」と笛を吹いてヘビをあやつる人ではありません。この男性はアスクレピオスという人物です。本紙5月号でカラス座の紹介をしました。カラスの告げ口によってアポロンがあやまって殺してしまったのがコロニス。そのコロニスの子どもがアスクレピオスです。アスクレピオスは、幼いころに馬人ケイローン(いて座)に預けられました。ケイローンは、ギリシャ神話の英雄たちに教育をほどこした賢人で乱暴者が多いケンタウロス族の仲間たちとは一味違った馬人です。ケイローンは、アスクレピオスにあらゆる知識を授けました。やがてアスクレピオスはすばらしい名医に育ち、様々なけがや病気を治療しました。ところがあまりの熱心さで、とうとう死んだ人まで生き返らせはじめてしまったのです。これに困ったのは、冥界の神プルトーンです。死者がやってこなくなってしまったからです。プルトーンは、大神ゼウスに「黄泉の国に死人が来なくなっては、世の中の秩序が乱れる」と抗議をしました。確かにこのままではいけないと考えたゼウスは雷電の矢をアスクレピオスに投げつけて殺してしまいました。しかし、彼の医者としての業績を評価したゼウスは、アスクレピオスを星座にしたということです。
へび座はアスクレピオスとセットで描かれていたものです。アスクレピオスはヘビの行動を観察して薬草の効き目を知ったという伝説があります。また、脱皮するヘビは再生や健康の象徴であったと言われています。
へびつかい座は、へびを掴んでいるアスクレピオス。へび座は、彼がつかんでいるへびです。へび座は星座の中で唯一、頭部と尾部の二つに分かれた星座です。
<参考> ・「全天星座百科」藤井旭著:河出書房新社

プラネタリウム100周年

2024年7月21日は、プラネタリウムの試験投影が行われてから100年目の日です。……あれ?去年も100周年って聞いたような?そうです。光学式プラネタリウムがこの世に初めて”誕生”したのは、1923年10月21日のこと。ドイツで誕生した投影機は何度も改良され、1924年7月21日に市民に向け”試験投影”、1925年5月7日にドイツ博物館に”常設公開”されました。この一連の出来事から100年経つということで、2023年10月21日から2025年5月7日までを、プラネタリウム100周年とし、世界中でイベントが行われています。
最初に発明されたツァイスI型(写真①)は、ミュンヘンの星空を再現するため、架台が北緯48度に固定されていました。他の地域の緯度に合わせて星空を投影できるよう開発が進み、北半球・南半球の星を二つの球(恒星球)に分けたダンベル型の投影機、ツァイスⅡ型(写真②)が誕生します。こちらが世界の各都市に広まり、1937年、東洋で初めて大阪市立電気科学館(現・大阪市立科学館)に設置されました。また、明石市立天文科学館にも導入され、1960年から稼働しており、現役ではアジア最古となります。
1950年代には、日本独自の国産プラネタリウムが誕生していきます。浜松科学館3階に常設展示されている興和プラネタリウムⅠB型(写真③)もその一つです。
一方で、浜松科学館のプラネタリウムで活躍しているケイロンⅢ(写真④)の形はこれまでのプラネタリウムは随分違いますね。ツァイスⅡ型や、興和プラネタリウムⅠ B型のようなダンベル型ではなく、球体が1つです。北半球・南半球と二つに分かれていた恒星球を一つにまとめ、惑星投影機を外に設置しています。周りにはデジタルプロジェクターを配置し、全天に星空以外の映像を投映できます。これにより、例えば宇宙空間に飛び出して惑星をめぐる宇宙旅行に出かけることだってできるようになりました。歴史を感じるものや進化したもの、それぞれの良さがあります。プラネタリウムの星空や体験を通して、少しでも多くの方々が幸せな気持ちになってもらえたらうれしい限りです。

▲①ツァイスⅠ型(Credit:ZEISS Archive)
▲①ツァイスⅠ型(Credit:ZEISS Archive)
▲②ツァイスⅡ型(Credit:ZEISS Archive)

▲②ツァイスⅡ型(Credit:ZEISS Archive)
▲③興和プラネタリウムⅠ型(浜松科学館3階)

▲③興和プラネタリウムⅠB型(浜松科学館3階)
▲④ケイロンⅢ(五藤光学研究所;浜松科学館プラネタリウムで活躍中)
中央のオレンジの線が入っている丸いものが本体、周りの4つのレンズと箱が大型プロジェクター、下のほうに惑星投映機が映り込んでいる。

▲④ケイロンⅢ(五藤光学研究所;浜松科学館プラネタリウムで活躍中)
中央のオレンジの線が入っている丸いものが本体、周りの4つのレンズと箱が大型プロジェクター、下のほうに惑星投映機が映り込んでいる。

浜松科学館で投映中の番組

  • 七夕まつり

    プラネタリウム
    「七夕まつり」(7/7まで)
  • キッズプラネタリウム
    「きらきら☆こんやのおほしさま」
  • すみっコぐらし

    大型映像
    「すみっコぐらし ひろい宇宙とオーロラのひかり」
  • 夜の科学館 特別投映

    夜の科学館 特別投映
    「光と色と波、そして宇宙へ」

番組についての詳細はこちら


関連記事