天文台からのコメント:秋になるとしだいに木々の葉が色付いてきますね。カエデの仲間は、実がプロペラ形で、風に吹かれるとくるくる回りながら落ちていきます。
自然の風景から季節の変化を感じられ、日本はすてきなところだなと感じます。秋の四辺形がきれいに見られるようになりました。星空からも季節の変化を感じられます。
(文:浜松市天文台)
浜松市天文台のWebサイト
10月の星空案内
2023年10月 上旬:21時ごろ 中旬:20時ごろ 下旬:19時ごろ
10月になって秋の星座が見えやすくなっています。秋の星座には明るい星が少ないですが、ひと際明るく目立って見える星はみなみのうお座のフォーマルハウト。秋の星座を作る星の中で、ただ一つの一等星です。
ほかにも、エチオピア王家をめぐる神話の一説に登場する星座が勢ぞろいします。アンドロメダ姫を襲う化けくじらと、助けに来た英雄ペルセウス。星座を描きながら、物語の絵本を見るような気分で楽しんでみましょう。
9月には中秋の名月を楽しんだ人も多いでしょうか。10月にもお月見の日があります。それは十三夜という日です。旧暦の9月13日にあたる日で、今の暦になおすと、10月27日が十三夜の日です。十三夜の月は中秋の名月に次いで美しい月だと言います。満月になる前の、まだ少し欠けた月の美しさを楽しむ風流なお月見です。
また、29日の夜明け前、午前4時30分ごろから午前6時ごろにかけて、西の方角、低い空では珍しい現象を見ることができます。満月だった月が少し欠けて見える、部分月食という現象です。月に地球の影が落ちて、満月が欠けて見えます。
それから、9月から見えていた土星に加えて木星も姿を見せるようになりました。みずがめ座の辺りに土星が、くじら座とおひつじ座の間に木星が見えています。24日には月と土星、29日には月と木星がよく近づいて見えるのでおすすめです。
アンドロメダ座
ペガスス座の四辺形(秋の四辺形)の北東の星がアンドロメダの頭です。「ペガススの四辺形」と名がついているものの、その一つはアンドロメダ座に所属しているのです。さらに、この星(アンドロメダ座α星)の名はアルフェラッツ(馬のへそ)。かつてペガスス座δ星であった名残です。実際、アルフェラッツをよけるように星座境界線が引かれています。
マンガ、聖闘士星矢には、アンドロメダ瞬という登場人物がいます。鎖の武器であるネビュラチェーンで戦う男子なのですが、星座のアンドロメダ物語は、美しいお姫様のお話です。
アンドロメダはケフェウス王とその王妃であるカシオペヤの間に生まれた娘で、大変美しかったといいます。母であるカシオペヤは、娘の美しさを自慢してまわります。ある日のこと、あろうことかカシオペヤは「私の娘は海の妖精たちよりも美しい。」と口をすべらせてしまったのでした。海の妖精たちは、「世界一の美女ぞろい」と自分たちの自慢をしていましたから、カシオペヤの自慢話を聞いて怒ってしまい、祖父に言いつけることにしました。この祖父が海の神ポセイドンです。ポセイドンもかなり腹を立て、ケフェウス王の国にお化けクジラを送りました。お化けクジラがやってきて、国には恐ろしいことがたくさん起こりました。なぜ、このようなことになったのか分からないケフェウス王が神様に尋ねてみますと、妻のカシオペヤの悪口が災いを起こしたことが分かります。その解決方法は一つ。娘のアンドロメダをお化けクジラの生けにえにすることでした。星座に描かれているのは生けにえのために、鎖につながれているアンドロメダです。そして、今にもクジラに食べられそうになるアンドロメダ姫を救ったのが勇者ペルセウスなのです。
<参考> ・「藤井旭の星座と星座神話 〈秋〉」藤井旭(著):誠文堂新光社
西の空?東の空?
10月24日に金星が西方最大離角となります。「西方」ですから、西の空に金星が見られると思われる方が多いでしょう。ところが、それは誤りです。
今回は、少しややこしい「最大離角」についてのお話です。最大離角とは、水星や金星といった地球の内側を回っている惑星(内惑星)が、太陽から最も離れる瞬間のことをいいます。地球から見て太陽の東側に離れるか、西側に離れるかで表現が異なります。内惑星が太陽の東側にある時は東方最大離角、西側にある時は西方最大離角といいます。
では、24日の金星はどちらの方角に見られるでしょうか?答えは、東の空です。この日、金星は太陽の西側に最も離れます。そして、太陽が昇る前、東の空に明るく輝いて見えるのです。太陽が昇ってしまうと、その明るさで金星は見えなくなってしまいます。日の出前のわずかな時間が金星を見られるチャンスです。木星や土星(外惑星)は一晩中見られる機会がありますが、水星や金星は太陽のとても近いところを回っているため、最大離角の頃が最も見やすくなります。
ちなみに、明け方に見られる金星のことを「明けの明星」といい、夕方に見られる金星のことを「宵の明星」といいます。今年いっぱいは、明けの明星を楽しめそうです。
金星は英語でVenus(ヴィーナス)といい、ヴィーナスはギリシャ神話では、愛と美の女神アフロディーテとされています。アフロディーテ、ヘラ、アテネの3柱の女神は“最も美しい女性はだれか?”というコンテストで「それは自分だ」と言い張り、一向に譲らなかったそうです。
金星のまばゆい輝きは、まるでアフロディーテの気の強さを体現しているかのようですね。
ルーベンス作『パリスの審判』。
3柱の女神のうち、右がヘラ、中央がアフロディーテ、左がアテネ。
[参考文献]
・国立天文台こよみ用語解説 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/faq/phenomena.html
・『神々を知ればもっと面白い!ギリシャ神話の教科書』東ゆみこ(ナツメ社)