天文台からのコメント:暦の上では立秋を迎えました。秋祭りの準備が始まりますが、まだまだ暑い日が続き、星空もまだまだ夏
の装いです。9月の宵に空高く昇っているのは夏の大三角です。
しかし、東の空には秋の星座たちが静かに登場してきています。控えめに輝く秋の星たち。1等星は、み
なみのうお座のフォーマルハウトだけです。土星が近くにあって、花を添えてくれています。
(文:浜松市天文台)
浜松市天文台のWebサイト
9月の星空案内:夏から秋へバトンタッチしていく星座たち
2023年9月 上旬:22時ごろ 中旬:21時ごろ 下旬:20時ごろ
9月に入り、日が沈む時間が少しずつ早くなってきました。
日が落ちてすぐの空には、まだ夏の星座たちが見えています。頭の真上、夜空の真ん中あたりには夏の星空の目印、夏の大三角を見つけることができます。そして、しばらく時間が経つと東の空から秋の星座たちも登場してきます。秋の四辺形が目印です。
このように、9月の星空では季節の移り変わりとともにバトンタッチしていく星座たちを見ることができます。
また、土星が見ごろを迎えています。明るい星が少なく控えめな秋の星空では、ひときわ目立ってよく見えます。特に、27日には土星と月が近づいて見えるのでおすすめです。
それから何といっても、9月はお月見の季節です。今年は29日が中秋の名月の日です。毎年、中秋の名月が満月になるわけではありませんが、今年は運よく満月です。
この頃の月は夏や冬に比べてちょうどいい高さに見えるので、月を見るのによい季節です。丸い月を眺めながら、月見団子でもいかがでしょうか。
カシオペヤ座
カシオペヤは古代エチオピア、ケフェウス王の王妃です。娘のアンドロメダの美しさを自慢したカシオペヤ。
「海の妖精たちも娘のアンドロメダの美しさにはかなわない」と言ってしまいました。海の妖精は、海の神ポセイドンの孫にあたりました。 彼女たちも自分たちは美しいと思っていましたので、カシオペヤの高慢な態度に我慢ができず、おじいさんのポセイドンに告げ口をしました。海の神の怒り買い、エチオピアの海岸はお化けくじらに襲われることになるのです。カシオペアは物語のきっかけとなった人物と言えるでしょう。
秋の星空にはこのエチオピア王家の話の登場人物(動物)たちが広がります。アンドロメダ座については 10 月号、ペルセウス座については 11 月号で紹介します。物語を楽しみながら、本物の空で星座を確かめていただけたらと思います。北の空で星々は時計と反対回りに動いているように見えます(東から西)。中心を北極星とすると、北斗七星とカシオペヤ座はおよそ対角の位置にあります。春から夏は北斗七星が北極星を探す目印となってくれましたが、これからはカシオペヤ座がその目印です。Mの字を延長した交点と中心の星を結び、約 5 倍のばすと北極星です。
<参考> ・「藤井旭の星座と星座神話 〈秋〉」藤井旭(著):誠文堂新光社
奪われるさそりの心
ギリシャ神話に登場するアルテミスは、月の女神です。アルテミスは弓の名手で、どんな獲物も仕留めることができます。9月21日は、アルテミスによって“さそりの心臓”が狙われそうです。
この日は夕方17時頃、南の空にさそり座が昇っています。しかし、まだ日の入前のため空は明るく、さそり座の目印となる1等星アンタレスを見つけるのは難しいかもしれません。アンタレスは、さそり座の胸の辺りで赤く光って見える星で「さそりの心臓の星」と例えられることがあります。他にも宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』では、さそりの体が燃えた時の炎に例えられたり、『星めぐりの歌』(作詞作曲:宮沢賢治)では「あかいめだまの さそり」と表現されたりしています。
さて、17時23分頃になると、いよいよアルテミスが狙いを定めます。月によってアンタレスが隠されてしまうのです。これを「アンタレス食」といいます。月は上弦前の欠けた姿をしています。アンタレスは太陽の光が当たっていない月の東側から潜入し、18時49分頃に光が当たっている月の西側から出現します。アンタレスは赤い光の点にしか見えないため、一瞬で月から姿を現します。よく目を凝らして観察しましょう。双眼鏡や望遠鏡があると見やすくなりますよ。
さそりの心臓は1時間半近くにわたってアルテミスに奪われてしまいますが、なんとか取り返すことに成功しそうです。さそりとアルテミスの攻防を見届けてあげてください。
※アンタレスの潜入・出現時刻
静岡〈潜入〉17時23.8分 〈出現〉18時49.6分
名古屋〈潜入〉17時20.4分 〈出現〉18時46.8分
[参考文献] 国立天文台 https://www.nao.ac.jp/astro/sky/2023/09-topics02.html