「紙おむつは、どうしてたくさんの水を吸いとることができるのだろうか。」
赤ちゃんのお世話や介護をしたことのある方なら、このような疑問を一度はもったことがありませんか。そうした方にも関心を持っていただける15分で科学実験「高吸水性ポリマーで芳香剤を作ろう」を行いました。
さて、紙おむつの中には、吸水用の材料として何が入っているのでしょう。
水を吸うものといえば、スポンジを思い出しますね。でも、その吸う量はわずか。しかも、力を加えるとすぐ水が出てしまいます。スポンジは、液が細い管に入ると上下に移動する毛細管現象によって水を吸います。
紙おむつでは、スポンジよりもはるかに吸水性にすぐれているものを材料に求められます。それが、高吸水性ポリマーです。そこで、この特性について、今回の実験の流れに沿って紹介しましょう。
■実験1~ポリマーはどうして水を吸う?~
クリアカップに入った高吸水性ポリマーに少しずつ水を加えます。しばらくすると、高吸水性ポリマーが水を吸って、徐々に膨らみゼリーのようなゲル状になります。
高吸水性ポリマーは、純水で自重の200~1000倍、尿の場合でも30~70倍と極めて高い吸水能力を持っています。
しかも、外から力を加えても、一度吸水された水は、ほとんど外に出ません。
参加者の皆さんも、少量の高吸水性ポリマーがどの程度まで多くの水を吸うのか実験し、その様子に見入っていました。
では、なぜ、高吸水性ポリマーは、吸水能力が高いのでしょうか。
ここでは、「分子のしくみ」と、「浸透圧」についてお話します。
「分子のしくみ」
図1をごらんください。
高吸水性ポリマーをどんどん拡大していき、分子に注目します。
分子は、鎖のように互いに結びつき、立体的な網の目状になっています。この網の目状が水に触れると、風船のように広がり、水を蓄えるというしくみをもっています。
「浸透圧」
水をぐんぐんと吸い込む力は、「浸透圧」によるものです。
浸透圧とは、2つの濃度が異なる水が隣り合わせのときに、濃度を一定に保とうとして水が移動する力を言います。
図2をごらんください。もう少し詳しく言いますと、高吸水性ポリマーに水が入ったとき、電離してナトリウムイオンが出てきます。この時、高吸水性ポリマー内側のナトリウムイオン濃度が濃くなり、外側のナトリウムイオン濃度が薄くなります。そこで、水は濃度差をなくすため外から内へと動いていくのです。
「分子のしくみ」と「浸透圧」によって、紙おむつがたくさんの量のおしっこ(全体の約9割が水)を吸いとる疑問が解けてきました。参加者の方から「何やら、紙おむつの見方が少し変わってきました。」といった声が、聞こえてきました。
これらの特性を活かして、高吸水性ポリマーは、紙おむつの他にも、保冷剤や簡易トイレ、土のうなど、私たちの身近なところで活用されています。
さらに、実験は続きました。
■実験2~ポリマーから水を出すには?~
実験1で十分吸水した高吸水性ポリマーに食塩を加えたら、どのような変化が起こるのでしょうか。
結果は、実験1とは反対に高吸水性ポリマーから水が出てきました。不思議ですね。それは、なぜでしょうか。
実は、水を排出する理由も、主に「浸透圧」によるものです。
図3をごらんください。
水を含んだ高吸水性ポリマーに食塩を加えると、食塩は水に溶けて、濃い食塩水になります。食塩が電離してナトリウムイオンが出てきます。
この時、高吸水性ポリマー内側と外側のナトリウムイオン濃度は、外で濃くなり内では薄くなります。そこで、水は濃度差をなくすため内から外へと出ていくのです。実験1のときと、水の動きが逆になります。
ここで、2つの実験を表でまとめます。
実験1 | 実験2 | |||
---|---|---|---|---|
高吸水性ポリマー | 水 | 高吸水性ポリマー | 水+食塩濃度 | |
濃度 | 濃い | 薄い | 薄い | 濃い |
水の動き | 水→高吸水性ポリマー | 高吸水性ポリマー→水 |
■実験3~芳香剤を作ろう~
参加した皆さんが高吸水性ポリマーの特性を知ったところで、最後に、芳香剤作りに挑戦しました。
クリアカップに入っている高吸水性ポリマーに水を加え、混ぜてゲル状にします。ここまでは、実験1と同じ作業。そこへ着色剤で色をつけて、芳香剤を入れる。高吸水性ポリマーを使った芳香剤の完成です。
高吸水性ポリマーを直接目にすることはほとんどありませんが、私たちの健康や生活、さらに防災まで大いに活用されています。
終わりに参加者へお願いしました。
「もし、高吸水性ポリマーを使った芳香剤をごみとして処理する場合には、可燃物として扱ってください。」
不用意に水道に流すと、どうなるか。ここまで読んだ方には、もうお分かりでしょう。高吸水性ポリマーによって水道管がつまり、水のトラブルが起きます。要注意です。
開催日:2022年2月6日(日)
担当者:山下真樹(やまちゃん)
参考サイト等:ユニ・チャーム株式会社
https://www.unicharm.co.jp/ja/csr-eco/education.html