五感で落ち葉を観察しよう

昨年末に自然観察園で「105歩で生き物観察」を開催しました。
自然観察園は科学館の敷地内にあり、本館の西側に位置します。浜松の周辺地域に自生する樹木が植えられ、科学館職員とボランティアによって維持管理されています。

とは言っても観察園の歩道は端から端までたったの105歩(筆者の歩幅)。普通に歩けば1分もかからず通過してしまいます。実はその1歩1歩の間にもたくさんの生き物が存在し、関わり合い、科学的な事象が起こっています。そんな「小さな森での小さな出会い」を、観察会を通して体験します。

観察会第一回目のテーマは「落ち葉」。
五感(落ち葉は食べられないので四感)をフル稼働して落ち葉を観察してみましょう。

音を楽しもう

まずは落ち葉を集めます。できるだけたくさんの樹種の葉を集めるために、色や形に注目しながら一枚一枚拾います。
「カサカサ」「パリパリ」「ザッザッ」「ガサガサ」
歩くだけで、色々な音が聞こえてきて楽しいですね。落ち葉の樹種はもちろん、日なたと日陰、落ち葉の量によっても落ち葉を踏む音は変わります。

匂いを楽しもう

自然観察園の一角を歩くと、ふわりとキャラメルのような甘い匂いがします。これはカツラの落ち葉の匂いです。カツラの落ち葉はハートの形をしていて、マルトールという香気成分が含まれています。マルトールは、実際にカラメルやパンなど糖分が熱せられる時に発生します。

カツラの落ち葉

形を楽しもう

拾った落ち葉を樹種ごとにまとめてみます。コナラ、クスノキ、アベマキ等々、計20種ほどの樹種の落ち葉が集まりました。

樹種によって落ち葉の形は様々です。コナラとクスノキの葉の縁を比べてみると、前者はギザギザ、後者はツルっとしています。ギザギザの葉は光合成の効率を高めるため、ツルっとした葉は雨水を葉から落としやすくするためと考えられています。

コナラ(左)とクスノキ(右)の落ち葉

手触りを楽しもう

コナラとアベマキは葉の形が似ています。しかし触ってみると、葉の裏がコナラはツルツル、アベマキはフカフカして細かい毛が生えていることが分かります。この手触りで2種を識別することができます。手触りも樹種を識別する上で重要な同定形質(種を特徴づける特徴)なのですね。

道端に落ちている落ち葉も五感を使って観察してみると、新たな一面が見えてくるかもしれません。生き物の活動が少なくなる冬ではありますが、生き物観察を楽しんでいきましょう。

イベント名:「105歩で生き物観察【落ち葉編】」
開催日::2021年12月25日(土), 26日(日)
イベント担当者:小粥隆弘(生き物博士)
参考資料:
小池孝良 「葉の形から知る樹木の環境適応と光合成作用」森林科学 45, 4–10 (2005)
矢吹萬壽『植物の動的環境』(朝倉書店, 1985)

関連記事