天文台からのコメント:2月3日は節分です。「季節を分ける」という意味があり、立春だけでなく、立夏、立秋、立冬の前日全てを指すそうです。季節の行事として、豆まきをする、恵方巻きを食べるといった催しが根付いていますね。暦の上では春ですが、寒さからすると2月が本格的な冬といえるのではないでしょうか。私は浜松育ちですが、大学生活は雪の降る地域で過ごしました。冬の空はどんよりと暗く、雪雲が広がっている日が多かったです。浜松は冬でも晴れの日が多く、天体観望ができます。星空を楽しむには、とてもいい地域です。ぜひ天文台へお越しください。(文:浜松市天文台)
浜松市天文台のWebサイト
2月の星空案内 星の等級と1等星で繋ぐ星座
2024年2月 上旬:21時ごろ 中旬:20時ごろ 下旬:19時ごろ
冬の星空は明るい星が多いことでよく知られています。星図を見ても目立つ星が多いですね。
星は明るい方から順に、1等星、2等星、3等星、…と等級がつけられます。地球からは文字通り”星の数ほど”星が見えますが、星空全体で1等星に認められているのは、たった21個だけです。冬の星空ではそのうち多くの1等星を見ることができます。上の星図でも9個の1等星が登場していることが分かります。
名前が書いてある星、シリウス、プロキオン、ベテルギウス、リゲル、ポルックス、カペラ、アルデバラン、レグルス、カノープスが1等星です。探してみてくださいね。
星図には冬の大三角が描かれていますが、他にも1等星をつないだ分かりやすい図形があります。
おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオン、ふたご座のポルックス、ぎょしゃ座のカペラ、おうし座のアルデバラン、オリオン座のリゲルと6つの星を繋いでできる六角形で、「冬のダイヤモンド」と呼びます。冬の星空で輝く世界一、いや宇宙一大きなダイヤモンドです。
また、おひつじ座の近くには木星が見えています。木星もかなり明るく、シリウスよりも明るく光って見えます。
1等星や冬のダイヤモンド、木星は街の中からでもよく見えます。少し寒いですが、そのぶん空気も澄んでいて星を見るにはいい季節です。寒さ対策をしっかりして、星を探してみてくださいね。
うさぎ座
冬の星空をながめると、まず目に付くのはオリオン座です。その足元で控えめに輝いている星座が、うさぎ座です。
天気のよい日にオリオン座の下を見ると、案外ウサギらしい形で星を結ぶことができます。うさぎ座は、現代の星座の基礎を築いたプトレマイオス(2世紀ギリシャの天文学者)の設定した星座の中に含まれており、古くからうさぎ座として認識されていたものと思われます。うさぎ座は、たしかにウサギらしい形ですが、上にあるオリオンの方が目立っていたことでしょう。「オリオンに接した星座」として付属的な扱いであったのではないかと考えられます。
神話としてうさぎ座の物語は伝わっていませんが、いくつかうさぎ座の由来が考えられています。一つは狩人オリオンが好んだ獲物というものです。もっとも理解しやすい由来です。さらに、オリオンの足元を犬に追われて逃げているウサギというものもあります。この犬はもちろんおおいぬ座です。紀元前3世紀ごろ、詩人アトラスの天文詩の中に「オリオンの足元を逃げ回り、大犬シリウスに追われるウサギ・・・」とうたわれているようです。また、野ウサギが増えて田畑を荒らして困っていた人たちが、おまじないとしてオリオンの下にウサギを置いたという言い伝えもあります。狩人オリオンや大犬がウサギを追いはらってくれると考えたそうです。
<参考> ・「全天星座百科」藤井旭著:河出書房新社
ちょこっと大人な話
星座を語る上では欠かせないギリシャ神話ですが、古代ローマ時代にはそれを元にローマ神話が作られました。数あるローマ神話の中の1つに、酒神バッカス(ディオニュソス)の物語があります。
お酒が大好きだったバッカスは、悪酔いした挙句、従えていた虎に「近くを通りかかった者を襲ってもいいぞ」と言ってしまいます。そこにアメシストという美しい女性が通りかかります。アメシストは月の女神ディアナ(アルテミス)に会いに行く途中でした。虎がアメシストに襲いかかろうとした、まさにその時、天から見ていたディアナがアメシストを水晶へと変えました。
バッカスはその美しい水晶を見た途端、自分の犯した罪の重さに気づき、反省をしました。そして、お詫びのしるしに手に持っていた葡萄酒を水晶へ注ぎ始めると、きれいな紫色に染まっていきました。こうして宝石のアメシスト(紫水晶)が誕生したといわれています。とてもユーモアあふれる素敵な神話ですね。
アメシストは2月の誕生石にもなっており、お酒が飲めるようになる20歳のお祝いに贈る人もいるようです。他にも「人生の悪酔いを避けてくれる」ともいわれ、道を逸れないように冷静さを保つ力をくれるそうです。今月はバレンタインデーがありますが、お酒を使ったウィスキーボンボンという一口サイズのチョコレートがありますね。チョコレートの原料はカカオです。学名は「Theobroma cacao(テオブロマ・カカオ)」といいます。テオブロマとは、ギリシャ語で「神様の食べ物」という意味だそうです。
みなさんも神様になったつもりでチョコレートを召し上がってみては? くれぐれも悪酔いには、お気をつけて。
[参考]
・中央宝石研究所https://www.cgl.co.jp/knowledge/episode/09.html
・株式会社明治 https://www.meiji.co.jp/quality/r_d/unique_technology/cacao/