天文台からのコメント:秋も深まり、木の実がたくさん落ちていますね。まん丸どんぐりのクヌギが大好きです。収集癖のある私は、木の実を拾い出したら止まらなくなります。星は、遥か遠く、手に入れることができません。それも魅力的です。今月は木星が衝を迎えて見ごろです。
(文:浜松市天文台)
浜松市天文台のWebサイト
11月の星空案内 秋の星座と惑星がみどころ
2023年11月 上旬:21時ごろ 中旬:20時ごろ 下旬:19時ごろ
11月になって日没の時間がずいぶん早くなりました。秋が深まる季節、空にも秋の星座が良く見えています。秋の星空は明るい星が少ないです。唯一の一等星はみなみのうお座のフォーマルハウト。秋の四辺形を見つけて、西側の辺を南の方に伸ばしていくと見つけやすいです。
その他にも、惑星がよく見えています。みずがめ座の辺りには土星、おひつじ座の辺りには木星が光っています。木星と土星はどちらもガスでできた、比較的大きな惑星です。2つまとめて「巨大ガス惑星」と呼ぶこともあります。色や見え方のちがいを比べてみるのも面白いでしょう。肉眼だと光る点にしか見えませんが、望遠鏡を使うと木星のしましま模様や土星の輪っかを見ることができますよ。
夜遅くまで時間が経つと、東の空からは冬の星座たちも見えてきます。秋の星空と比較して、冬の星座には明るい星が多く賑やかなのが特徴です。秋の夜長のお供に、星空を楽しんでみてはいかがでしょうか。
ペルセウス座
夏の「ペルセウス座流星群」として有名な星座です。秋の星座の仲間に入っていますが、すぐとなりは冬の星座です。晩秋を飾る星座ともいえるペルセウス座は、星雲や星団、変光星など、見どころがたくさんあります。
ペルセウス座にはこんな物語があります。(9月号から続く秋の星座の物語です。)
母カシオペヤが口を滑らせてしまったことで、お化けクジラの生けにえとなった娘のアンドロメダ。それを救ったのがペルセウスです。この化け物を見事撃退し、めでたくアンドロメダ姫と結婚したという神話が残っています。
ペルセウスは手にメドゥーサの首を持った姿で描かれます。メドゥーサは世界のはてに住むゴルゴン三姉妹の一人。髪の毛が生きたヘビという不気味な女性で、その顔を見たものは石になってしまうと言われています。ポリュデクテス王にメドゥーサの首を持ってくるよう命じられたペルセウスは、数々の危機を乗り越え、鏡代わりの楯にメドゥーサを映して、後ろ向きに剣で倒したと言われています。
アンドロメダを助けるときにもこのメドゥーサの首を使ったと伝えられています。この首をお化けクジラに向けて、石にして海に沈めてしまったということです。
<参考> ・「藤井旭の星座と星座神話 〈秋〉」藤井旭(著):誠文堂新光社
星空の中心
紅葉が見られる季節になりました。冬が近づくと、落葉樹は葉を落とします。これは、夏の間に蓄えた水分が乾燥によって葉から蒸散してしまうのを防ぐためです。
このように、植物には1年を通して姿を変えるものがありますが、空には1年中ほぼ同じ位置に留まり、いつでも見られる星があります。
それは「北極星」です。北の空を一晩中眺めていると、この北極星を中心に周囲の星々が反時計回りに回っているように見えます。なぜかというと、北極星は地球の地軸の延長線上にあるからです。地球は西から東へ向かって自転しています。そのため、南の空を見ると星は反対に東から西へ向かって動いて見え、北の空を見ると北極星を中心に反時計回りに回って見えるのです。
また北極星は、こぐま座の長いしっぽの先で輝く2等星です。ギリシャ神話によると、こぐまは全知全能の神ゼウスにしっぽをつかまれ、放り上げられて星座になりました。その時にしっぽが長く伸びてしまったのだそう。なんだか気の毒ですね。
ところで、北極星は浜松からはどれくらいの高さに見えるのでしょうか?意外と答えは簡単です。浜松の緯度は34.7度。北極星の高さは、同じく34.7度です。つまり、北極星の高度は観測地点の緯度と同じなのです(南半球では北極星は見えません)。北極点で見れば90度、赤道上で見れば0度の高さに見えます。
北極圏(北緯66度33分以北)では、11月になると「極夜」の時期になります。極夜とは1日を通して太陽が昇らず、夜が続く現象です。北極点では半年もの間、天頂に北極星が輝き、その周りを星々がメリーゴーランドのように回って見える光景が続くのです。
みなさんも今夜、“星空の中心”を探してみませんか?
こぐま座。しっぽの先にある2等星が北極星
[参考文献]
・国立科学博物館 宇宙の質問箱 https://www.kahaku.go.jp/exhibitions/vm/resource/tenmon/space/seiza/seiza02.html