アミノ酸は、アミノ基とカルボキシ基と呼ばれる、2種類の決まった構造を持つ有機化合物です。真ん中の構造はアミノ酸の種類によって異なりますが、両側には必ずアミノ基とカルボキシ基があります。
アミノ酸が二つあると、アミノ基とカルボキシ基が結合してペプチドとよばれる構造をつくります。アミノ酸の種類が違っていても、両側の構造が同じなので、レゴブロックのように、たくさんつながっていろいろな形をつくることができます。(図2)ペプチドがたくさんつながったものをポリペプチドと呼び、長いポリペプチドの鎖が折りたたまれると、たんぱく質になります。
ヒトの体は、約60%が水分です。そして、残りの成分のうち約20%がたんぱく質で出来ています。たんぱく質は皮膚や筋肉、爪、髪の毛など体の重要な組織をつくっています。この、たんぱく質の素となるのがアミノ酸です。ヒト以外の生き物も、たんぱく質はアミノ酸で出来ています。自然界で見つかっているアミノ酸は500種類ほどありますが、そのうちたんぱく質を構成するアミノ酸は20種類です。アミノ酸の数や並び方によって、できるたんぱく質が変わり、筋肉になったり、髪の毛になったりするのです。
たんぱく質はDNAという設計図にしたがって作られますが、アミノ酸は自然界でも簡単に作られることが分かっています。最初の生物は、自然界で作られたアミノ酸などの物質があつまって誕生したのではないかと考えられています。リュウグウで発見された23種類のアミノ酸のうち、11種類が生物の体に使われるアミノ酸でした。地球上の物質がないはずの小惑星リュウグウにアミノ酸があったということは、現在の地球上の生命のもととなる物質が、宇宙からもたらされた可能性を示しています。
リュウグウ試料に含まれるアミノ酸の分析は液体クロマトグラフィーという手法を使って行われましたが、アミノ酸の有る無しだけを確認するなら、もう少し簡単な方法で調べることができます。アミノ酸の有無を調べる化学反応「ニンヒドリン反応」は、アミノ酸のアミノ基とニンヒドリンが反応し、青紫色になる反応です。アミノ酸の量が多ければ多いほど、濃い青紫色になります。アミノ基を持たない物質には反応しないので、色がつきません。このニンヒドリン反応はわずかな量のアミノ酸にも反応するため、指紋の検出など警察の科学捜査の手法としても用いられることがあります。
3月5日に実施されたイベント「化学反応で指紋を見よう」では、ニンヒドリン溶液がしみ込んだ紙を用いて指紋を検出する実験を行いました。
白い紙に触ると、指紋が浮き出てきます。これは、皮脂や汗など体に含まれるアミノ酸が紙に付着して、化学反応を起こしているためです。食塩や砂糖、うま味調味料などの身の回りの物質についても調べてみると、うま味調味料にはたくさんのアミノ酸が含まれていることが分かりました。
参加者の皆さんの実験も大成功。実験を通して生き物の体にアミノ酸が含まれていることを体感できました。
開催日:2023年3月4日(土)
イベント担当者:水谷穂波
参考資料
・小惑星探査機「はやぶさ2」初期分析 可溶性有機物分析チーム
研究成果の科学誌「Science」論文掲載について
(JAXAプレスリリース 2023.2.24, JAXA HP)
https://www.jaxa.jp/press/2023/02/20230224-1_j.html
・アミノ酸組成分析 ニンヒドリン発色法(富士フィルム和光純薬株式会社HP)
https://labchem-wako.fujifilm.com/jp/category/00434.html
・「アミノ酸大百科」カンタン解説!アミノ酸(味の素株式会社HP)
https://www.ajinomoto.co.jp/amino/about/aminoacids/